黒留袖
#柄#マナー#着こなし
2023.09.12

着物の「文様」や「絵柄」の種類|意味や季節別に文様を紹介

日本では古来から食器や工芸品など様々なところに文様があしらわれてきました。その中でも特に縁起が良いとされている文様が「吉祥文様」です。着物の伝統的な柄としても多く描かれています。今回はその文様にこめられた願いや想い、それから季節感について紹介します。着物の絵柄を悩んでいる方はぜひご参考になさってください。

柄にこめられている意味で選ぶ

結婚式や披露宴といったお祝いの席や、たとえば新年の初詣などで着物を着るなら、「幸せになってもらいたい」「良い年になりますように」といった気持ちを込めて、縁起のいい柄を選ぶ習わしがあります。もともと着物の柄には長寿や吉兆の意味を表すものが多く、古来さまざまな意味合いを込めて描かれ、また選ばれてきました。
ご自身の想いや願い、または新郎新婦へのメッセージを込めて、着物の柄を選んでみてはいかがでしょう?

季節に合わせて柄を選ぶ

着物には季節に合う柄があります。例えば、その季節ごとに咲く花々や、美しく育つ草などの柄ですが、実際のシーズンより少し先取りして選ぶのが、着物ならではの粋なポイント。
たとえば春の桜が満開になる頃の着物には、藤の花や菖蒲(あやめ)など、ひとつ先の季節に咲く花を選ぶのがおしゃれな装いです。

その一方で、一年を通して着ることができる柄もあります。桜はその代表的なもので、五穀豊穣や物事の始まりを象徴する縁起の良い柄とされます。桜の花だけを描いたもの、ほかの季節の植物と組み合わせた柄は、一年中いつでも着用が可能です。
ただし、枝まで描かれた写実的な桜なら、実際に開花する前までに着るのがおすすめです。

【意味別】縁起が良いと言われる定番の吉祥文様14選

柄にこめられている意味で選ぶ

伝統的に縁起が良いとされる柄のことを「吉祥文様(きっしょうもんよう)」と呼びます。お祝いや厄除けのお守りとして描かれていることが多く、そのバリエーションは実に何十種類にも及びます。
吉祥文様の代表的な柄を厳選して、それぞれの文様に込められた願いについてご紹介します。

亀甲文様

同じ大きさの六角形が連続的に並んだ文様で、その名の通り、亀の甲羅をイメージしています。亀の中には100年以上も生きる種類があり、日本でも鶴と並んで長寿の象徴。「鶴は千年、亀は万年」ということわざをご存知の方も多いでしょう。

今と違って昔は乳幼児が無事に成長するのは難しかったこともあり、亀甲文様は、お宮参りの着物に良く使われてきました。また、縁結びで有名な出雲大社のご神紋にも亀甲文様が見られ、良縁を呼ぶ吉祥文様ともいされています。

古くから亀と並ぶ長寿の象徴とされる鶴は、つがい(カップル)の仲が良く、一生添い遂げるという言い伝えがあることから、夫婦円満の象徴として描かれてきました。特に花嫁衣裳の白無垢や色打掛などに多く見られるのはこのため。

また、高く天まで届きそうな鳴き声から天と地をつなぐ存在とも信じられ、生命力や良縁への願いを込めて着物の柄として長く愛され続けています。

熨斗・束ね熨斗文様

結婚式の御祝儀袋で「熨斗(のし)」の模様を見たことがある人は多いでしょう。熨斗は古来、神様への贈り物になっていた「熨斗鮑(のしあわび)」を略した言葉。当時も高級食材だった鮑を薄く削ぎ「火熨斗」(ひのし)というアイロンのような道具で薄く伸ばして乾燥、束ねて紙で包んだものです。

【季節別】着物で愛される柄

熨斗鮑の実物とは違って、熨斗モチーフの着物柄は実にカラフル。熨斗の部分に細かい文様が描かれるのも特徴的です。長く伸びる熨斗は長寿や永続的な幸福の象徴とされ、熨斗を複数束ねたものには「多くの人から祝福される」「人と人とのつながりと絆」の意味が込められています。

紗綾形

「紗綾形」(さやがた)は、よく見ると「卍」(まんじ)の文字を菱形に歪めて、文字同士を迷路のようにつないで描いたものです。「万字繋ぎ」とも呼ばれる文様の一種で、「卍」の文字がどこまでも途切れずに繋がっていることから、長寿や家の繁栄を願う「不断長久」の意味を込めた吉祥文様です。

夫婦円満の意味がこめられた柄

鳳凰

鳥の王とされる「鳳凰(ほうおう)」は、良いことが起こる前兆とされた、古代中国の伝説上の生き物。
前部が麒麟(キリン)、後部が鹿、首は蛇で背中が亀、顎が燕(ツバメ)でクチバシが鶏、尾は魚の容姿を組み合わせて描かれています。

「平和で幸せな世界が訪れるときに現れる」という言い伝えがあり、鶴と同じく、慶事を象徴する瑞鳥(ずいちょう、縁起のいい鳥)として、日本でも長く愛されている柄です。

花丸文

草花を円形に図案化した「花丸紋」は、「花の丸」。リアルに花を描いたものから、幾何学模様のように描かれたものもあり、使われる花の種類や数も様々にあります。
日本の国旗が「日の丸」であることからもわかるように、「丸」の形は、完全と統一、無限の発展など、多くの神秘的な意味を込めて使われてきました。また、「円(縁)を結ぶ」「輪(和)をもって尊しとなす」「夫婦円満」などの言葉が連想できることから、結婚のお祝いにふさわしい柄となっています。

芋虫から蛹(さなぎ)になり、美しい成虫へと姿を変えていく蝶。その華やかな変容から、蝶は女性の健やかな成長を表している柄とみなされてきました。産卵期を迎えた蝶がつがいで仲睦まじく飛ぶ姿から、夫婦円満を表す吉祥文様としても使われています。

貝合わせ・貝桶柄

蛤(はまぐり)などの二枚貝は他の貝とは絶対にピタリと合わないことから、夫婦和合の象徴として、婚礼では欠かせない柄とされてきました。
平安貴族の遊び「貝合わせ」の貝を納めるための美しい入れ物が「貝桶」(かいおけ)で、こちらも同様に、婚礼で喜ばれる吉祥柄です。特に貝桶柄は、大きく描かれているものが格式高いとされ、留袖や振袖などの着物柄として多く登場しています。

子孫繁栄の意味がこめられた柄

入子菱

「入子」(いれこ)とは、箱や器の中に、小さな同じ形のものが何重にも入っている状態のこと。「入子菱」は菱形が二重、三重にもなっている吉祥文様です。菱形のモチーフとなった植物の「菱」(ひし)は、とても繁殖力が強いことで知られ、子孫繁栄や五穀豊穣の願いを込めた吉祥文様とされています。

市松文様

人気アニメのキャラクターが着て以来、目にする機会がぐんと増えた市松文様。同じ大きさの正方形を交互に並べた幾何学模様は、もともと江戸時代に歌舞伎役者・佐野川市松が着用した袴の柄として大流行。東京オリンピック2020のエンブレムで使用されるなど、現代も広く愛され続けています。
柄が途切れることなく続いていくことから、子孫繁栄や事業拡大の意味が込められた柄です。

栄達の意味がこめられた柄

松竹梅

「松竹梅」と聞くと、お正月やおめでたいイメージを思い浮かべる方も多いでしょう。松竹梅の柄は、古代中国で「最寒の三友」という言葉があり、そこから派生した柄と考えられています。
一年中緑を絶やさない松は「常盤木(ときわぎ)」とも呼ばれ、同じく常緑の竹も、真っ直ぐに伸びる姿が好まれてきました。寒さのもっとも厳しい時期に花を咲かせる梅は、松や竹の緑に彩りを添える存在。つまり松竹梅には「人生で厳しい時期も乗り越えて繁栄しますように」という願いが込められ、結婚式などの慶事でよく用いられます。

七宝文様

「七宝文様」は、同じ大きさの円や楕円を1/4ずつ重ねた柄です。「七宝」は仏教用語で、金・銀・瑠璃(るり)・玻瓈(はり)・硨磲(しゃこ)・赤珠(しゃくしゅ)・碼碯(めのう)の七つの宝のこと。
和柄としては、多くの輪が繋がって広がっていく様子から、江戸時代の頃に「四方(しほう)」がなまって「しっぽう」と呼ばれ、「七宝」の漢字が当てられるようになったそう。「円満」や「調和」など、人間関係の豊かな広がりを願う柄とされ、結婚や転居・新生活などで良く使われます。

宝尽くし文様

縁起の良いお祝いの場面で着用されることが多い「宝尽くし」の文様は、たくさんの宝物を集めた様子を描いたものです。どんな宝かというと、宝珠・隠れ蓑(みの)・打ち出の小槌(こづち)・宝鑰(ほうやく:蔵の鍵)・金嚢(きんのう:巾着)・宝巻(ほうかん)・筒守(つつもり)・分銅(ふんどう)・丁子(ちょうじ)・七宝輪違い(わちがい)など、時代や地域によって宝の組み合わせは様々なバリエーションがあります。
現代では晴れ着の柄として着用されることが多く、かわいらしさと豪華な印象が残る吉祥文様です。

扇の「末広がり」の形は、未来への明るい展望を感じさせ、縁起が良い柄です。扇の文様は、家の発展や繁栄を願う気持ちが込められたおめでたい柄として、多くの着物に描かれてきました。
室町時代に始まった祝いの席ではご祝儀に扇を贈るという風習にちなんで、現代でも慶事に着物を着る際には、必ずセットで扇を持つことになっています。

【季節別】着物で愛される柄

【季節別】着物で愛される柄

さて、せっかく華やかな花がたくさん描かれる着物を着るのなら、季節を感じさせる花を選びたいと思われる方も多いでしょう。
ここからは、日本の四季に合わせた代表的な植物柄についてご紹介します。

春には桜や牡丹がおすすめ

春の代表的な花といえば、やはり「桜」でしょう。白とピンクの配色が柔らかく、女性らしい印象を与えてくれる桜は、花の形や枝垂れ桜を描いた柄が人気です。日本を代表する国花でもあるため、季節を超えて着物のモチーフとして広く愛されてきました。特に春は、入学式や卒業式など、着物を着る機会が多い季節でもあり、季節感からも活用しやすい柄ともいえます。

桜のほかに、大輪の「牡丹」(ぼたん)も、春の代表的な柄の一つ。こちらは主な開花シーズンが4〜6月のため、その少し前の3月から5月くらいまでに着る着物や帯の柄としてふさわしいものです。

夏には紫陽花や朝顔がおすすめ

初夏から6月ごろには、表情豊かな紫陽花の花柄がおすすめ。ほかには鉄線(てっせん)や百合(ゆり)、あざみの花なども、この時期にぴったりの柄です。
7月に入ると朝顔やひまわりで夏らしい装いに。8月の初旬にかけては、ほおずきの実などもおすすめ。
8月後半からは一足早く秋の七草でもある撫子(なでしこ)や桔梗(ききょう)、萩(はぎ)、尾花(おばな、すすき)、葛(くず)の花などを取り入れて、秋の装いを楽しむのが素敵です。

秋には萩や桔梗がおすすめ

秋は美しい紅葉を感じさせる、朱色や茶色、辛子色などの暖色の着物がよく似合います。また柿色や、ぶどうのくすんだ紫色なども素敵です。

赤紫や白い色の小さな花をたくさんつける秋の七草・萩(はぎ)もおすすめ。実際の季節感では8月から秋が深まるまでの時季に着られることが多い柄ですが、ほかの季節の草花と合わせやすく、春・秋の文様が一緒に描かれることも増えています。
同じ秋の七草でも、桔梗の柄は、初秋から10月頃まで。秋を先取りして盛夏の8月から着用されます。

秋といえば紅葉(もみじ)ですが、季節感としては多くの場合10月〜11月頃を中心に着られることが多い印象です。
桜などの春の花と合わせた柄や、抽象的に描かれた紅葉の柄は、季節を問わず通年着用ができます。

冬には椿や菊がおすすめ

あまり花のイメージがない季節ですが、冬の花の代表格は「椿」でしょう。早咲きや遅咲きの品種があり、比較的長い期間咲き続けるので、晩秋・初冬の12月から春の訪れを待つ柄として、翌2月頃まで着用可能です。
また、秋から咲く菊も使えます。古くから薬としての効果も持つ菊の花は重宝され、不老長寿を願う意味も込めて、通年着られる柄です。

まとめ

結婚式などのお祝い、慶事で着用する着物の柄に願いを込めるのは、着物ならではの楽しみ方。
繁栄や長寿、夫婦円満など様々な意味が込められた縁起の良い吉祥文様のなかから、お気持ちにぴったりの柄を見つけてみてはいかがでしょう。

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